エンドレステイルズ「ちいさな魔王のおはなし」 【あらすじ】 むかしむかし、あるところに、1人の魔王が住んでおりました。 名前はマオ。そのまんまとか言ってはいけません。 ある日、城の食料庫からおやつが盗まれたから、さあ大変。 魔王のマオは従者のポチとおやつを盗んだ犯人を捜すことに。 果たして犯人は見つかるのでしょうか? 【概要】 単発のボイスドラマです。 【傾向】 ほのぼのギャグファンタジー 【キャラクター】 マオ:由緒正しい魔王の家系の魔族。どうにもお子様。一応女の子らしい。 ポチ(従者):普段は人型だが、正体はマオの飼ってる魔界ハムスター。 知能はそれほど低くないので従者としてこき使われている。 ゴーシュ:ゴースト。魔王城屋根裏に住んでる幽霊兄妹の兄。陰気。 しぃ:バンシー。魔王城屋根裏に住んでる幽霊兄妹の妹。泣き上戸。いつも泣いてる。 ディー:魔王城玄関ホールで勝手に土産屋を営む居候の不良ダークエルフ。 魔界ペンギンを飼って(?)いる。 ギン:ディーのペット(?)の魔界ペンギン。時折凶暴。「ぐげー」としか喋らない。 マジョリカ:先々代魔王の愛人の魔女。勝手に城の一室に住み着いている。年増。 カガミ:マジョリカの使い魔の鏡の精霊。気弱。ブラックファングに憧れている。 ブラックファング:オネエ言葉なブラックドラゴン。魔王城の門番。ポチに惚れている。 ユーラルディック:国王に魔王退治を頼まれた勇者。実は幼女に弱い。 【シナリオ】 ナレーション:これは、どこかの世界での、小さな魔王のおはなし。 (バタンとドアが開く音) 従者:「魔王様!魔王様ー!大変です!」 (マオ、床に寝そべって何やらラクガキをしている。) マオ:「何事だ?騒々しい。」 マオ:「余は今、大きくなったらどこの国をどういう風に支配するかを決めるのに忙しいのだ。」 従者:「ただ世界地図にラクガキしてるだけじゃないですか、それ。」 マオ:「うるさいなー。あげ足を取るんじゃない。それより、そろそろおやつの時間だぞ。今日のおやつを持ってこい!」 従者:「だから魔王様、大変なんですってば。」 従者:「城の食料庫からお菓子がごっそり盗まれたんです。」 マオ:「なにーー!!?」 ナレーション:ということで、魔王城の食料庫。 マオ:「ない!ない!余が今日食べようと思ってたクッキーもチョコもプリンもケーキもあれもそれもこれも全部なーい!!!昨日までは確かにあったのに!」 従者:「ね。だから言ったじゃないですか。」 マオ:「お前、のん気にしてる場合か!?魔王である余の物が盗まれたんだぞ!これは余の威信に関わる大事件だ!」 従者:「魔王様、難しい言葉知ってますね。えらいえらい。」 マオ:「うっさい!ともかく城の全員で早いとこ犯人を見つけ出せ!そんでもって血祭りだ!」 従者:「はっ!」 (従者、一目散に走り去る。) ナレーション:10分後。 従者:「魔王様!みんなに「忙しいからあーとーで。」って断られました!」 マオ:「みんなか!」 従者:「みんなです。」 マオ:「くっ…薄情なやつらめ。仕方ない、余とお前の2人で探すぞ!」 従者:「魔王様、申し上げますが、私もどっちかっていうと面倒です。」 マオ:「いーの!探すのッ!ついてこい早くッ!!」 ナレーション:こうして魔王と従者はおやつ行方不明事件の犯人を捜すことになりました。 マオ:「まずは城の者に話を聞いてみよう。誰か不審者を見た者がいるかもしれない。」 従者:「お、聞き込みですか!聞き込みは捜査の基本ですからね!」 マオ:「む、さっきと違ってやる気だな。」 従者:「いやー、聞き込みとかってワクワクするじゃないですか!探偵みたいで!「じっちゃんの名にかけて!」とか!「真実はいつもひとつ!」とか!!」 マオ:「お前、何に影響されてるんだ。…まあいい。まずは屋根裏のゴースト達に話を聞きに行くぞ。」 従者:「了解、刑事(デカ)長!」 マオ:「探偵関係ないじゃん!刑事長じゃないから!!魔王だから!!」 ナレーション:…ということで、魔王城、屋根裏部屋。幽霊兄妹の住処。 (ドアの中からわざとらしいほどの泣き声が聞こえてくる) バンシー:「うぅ〜…うえぇん…しくしくしく…」 (ぎしぎし、と床板がきしむ音。かなりボロい。) マオ:「…うぅ…。いつ来てもここは不気味だな…」 従者:「魔王様、先に行ってください。」 マオ:「い、嫌だ!お前先行け!オスだろ!」 従者:「嫌ですよ!魔王様のが年上でしょッ!!」 (ひゅ〜どろどろどろ、という幽霊っぽい効果音。)(争ってる2人の後ろから声がかけられる) ゴースト:「じゃあ〜…僕が先に入りましょうか〜…?」(陰気な声で) マオ・従者:「「うわぁ!!?」」 マオ:「な、なんだ…ゴーストか。驚かすな!」 (従者、後ろで頭抱えてうずくまってガタガタ震えている) 従者:「ごめんなさいすいませんもうピーマン残したりしませんからー!」(句読点ない感じで早口に) ゴースト:「もったいないお化けじゃないですよ〜…」 (ちょっと間) ゴースト:「食料を盗んだ犯人を〜、捜してるんでしたっけ〜?」 マオ:「そうだ。何か知らないか?」 ゴースト:「僕は何も見てないですね〜…。そうだ、妹にも聞いてみましょう〜…。おーい〜…」 (ガチャリと音がしてドアが開く。中から幽霊の少女が出てくる) バンシー:「うえぇん…ぐすん…しくしくしく…」 マオ:「おお、バンシーか。お前は何か知らないか?余の威信に関わる大事件なのだ!」 バンシー:「うぅ…うえぇぇん!!」(激しく泣く) マオ:「えぇい、泣いてばかりではわからんではないか!」 ゴースト:「昨日の夜中に城内をうろつく怪しい人影を見た、だそうです〜…」 バンシー:「うえぇん!!」(激しく泣いてる) マオ:「本当か!?本当にそう言ってるのか、コレ!!」(信じられない様子) 従者:「もしかしてその人影が真犯人ですかね!刑事長!」 マオ:「あ、立ち直った。」 ナレーション:魔王城・玄関ホール。 マオ:「侵入者がいたとすれば…恐らくここから入ってきたはずだッ!」(自信満々) 従者:「玄関からですか?いくらなんでもそれは…」 (玄関外にある露店の人物達から声をかけられる。) ディー:「おお、マオにポチじゃねぇか。何か買っていかねぇか?」 ギン:「ぐげー」 従者:「こんにちは、ディーさん、ギンさん。えーと、あの、これは…お土産屋さんですか?」 マオ:「おい、そこのホームレスダークエルフに野良魔界ペンギン。お前ら、勝手に余の城の入口前で商売をするな!商売するならショバ代とやらをもらうからな!」 ギン:「ぐげー。ぐげ。」(不満げ) ディー:「売れねぇんだから払えねぇよ、そんなもん。早いとこマオも有名になって勇者の1人や2人や数百人に狙われるようになってくれよ。じゃないと商売あがったりだぜ。」 マオ:「余はいいのだ。大器晩成型だから。大人になったらすごいことになるぞ。」 従者:「だといいんですけど…」 ギン:「ぐげー。」 マオ:「何か言ったか!?…と、今はそれどころではなかったな。ディー、ギン、お前達は昨日の夜もここにいたのか?」 ディー:「おうよ。長いことここで粘ってるからな。玄関先で寝るのも慣れちまったぜ。」 ギン:「ぐげ。」 従者:「えーと、じゃあ、昨日の夜に怪しい人影を見たりなんかは…?」 ディー:「いや、俺は見てないな。」 ギン:「ぐげっげー!」(主張する感じで) マオ:「おお、お前は見たのか!?」 ギン:「ぐげー!ぐげー…ぐげー?」(3つとも違う感じで) マオ:「…何を言ってるのかさっぱりわからん。」 ディー:「ふっ…俺にもわからんさ。」 従者:「えーと、なになに…玄関からは、入ってきた人は、いなかった、と。」 マオ:「ぽち!お前、わかるのか!?すごいぞ!ぽち!」 ディー:「最も解読が難しいと言われる魔界ペンギン語がわかるとは…お前、やるな。名前ポチのくせに。」 従者:「名前のことは言わないで下さい。」 従者:「こんな言葉くらいどうってことないですよ。魔界珠算7級だって持ってるんですよ、私は!」 ディー:「関係ないな。」 マオ:「関係ないぞ。」 マオ:「…しかし、玄関から入ってきた者がいないとは…。犯人は城の者か?」 従者:「魔王様、まだ決めつけるのは早いですよ。魔王城に窓がいくつあると思ってるんですか?もしかしたら窓かどこかから入った者がいるかもしれないじゃないですか。」 マオ:「はっ!窓か!(今気付いた風) ちょ、ちょうど余もそれを考えていた所だ!」 従者:「えー、本当ですかー?」(疑っている) マオ:「い、いいから、次に行くぞ! 今度は、門番の黒竜(こくりゅう)にでも話を聞いてみるか。」 従者:「えぇっ!?ブラックファングさんですか!?気が進まないなぁ…」 ディー:「なーんか大変そうだな。ま、それが終わったら偶には買い物にでも来てくれよ。」 マオ:「気が向いたらな。」(きっぱり) ギン:「ぐげっげー」(お達者でー、という感じで) ナレーション:魔王城正門前。 (門の前に強面の竜がどっしり座っている) ブラックファング:「まあ!ポチさん!アタシに会いに来てくれたのぉ?」 従者:「いえ、はぁ…まあ。会いに来たというか話を聞きに来たというか…」(しどろもどろ) ブラックファング:「んまっ!感激だわ!今日はトコトン2人の将来について話し合いましょ!」 従者:「えぇぇ…ま、魔王様!パスッ!!」 (ぐい、とマオを前に押し出す) マオ:「残念だったな、ブラックファング。余とこいつは今、重大な事件について調査を行っている。昨日から今日までの間に何者かが城に侵入したかもしれないのだ。怪しい者を見かけてないか?」 ブラックファング:「えぇ〜、そうなのぉ?そういえばさっきぽちさんが遠くから言ってたわねぇ。てっきり愛の告白かと思ったわぁ」 従者:「違います違います違いますッ!!」(必死) ブラックファング:「(ちょっと考えて)そおねぇ、魔王サマ。協力してあげたらポチさんとお付き合いしてもいーい?」 従者:「うえぇ!?」 マオ:「(即答)うん、構わんぞ。」 ブラックファング:「きゃっvいいのぉ?ありがとう、魔王サマv」 従者:「魔王様!?そんなぁ〜…この人絶対僕のこと天ぷらにでもして食べるつもりですよぉ!!」 ブラックファング:「いや〜ね、ぽちさん。…フライよ。」(後半、冷徹な声で) 従者:「同じじゃん!!!」 マオ:「まあ天ぷらだろうがフライだろうがどうでもいい。で、何か知ってるのか?」 ブラックファング:「昨日の夜から今まで、城の外から来た人はいないはずよ。アタシ、夜ふかしはしない主義だからいつも早く寝ちゃうんだけど、繊細だから物音には敏感なの。誰か来たら気付くはずよ。」 従者:「(ぼそぼそ)繊細というかなんというか…」 マオ:「ふむ、じゃあやはり城の中の誰かが…?」 ブラックファング:「あ、そうそう。そういう探しものならマジョリカ様に聞けばいいんじゃなぁい?あの人、そういうの得意そうだし〜」 マオ:「魔女のマジョリカか…そうだな、一応話を聞いてみるか。よし、行ってみるぞ。」 ブラックファング:「ポチさん、お仕事がんばってねぇ〜vアタシ、ずっとここで待ってるからぁ〜」 従者:「(ぼそぼそ)これからしばらく、ここには近づかないようにしよう…」 ナレーション:魔王城・魔女の部屋。 マジョリカ:「鏡よ鏡よ、鏡のカガミちゃん。世界で一番美しいのはだあれ?」 カガミ:「あの、その、マジョリカ様だと思います…」 マジョリカ:「ほーっほっほっほ!やっぱりそうよねぇ!」 マオ:「でも僕は、その、ブラックファングさんみたいな女性のが素敵だと…」(照れて地面にのの字を書いてる感じで) マジョリカ:「(聞いてない感じで遮って鏡を覗いている)あら、やーだ。こんなとこにシワが。エステに予約入れとかなくちゃ。」 従者:「あの〜…」 マオ:「偉大なる魔王様の訪問だぞ。なに肌のお手入れに専念してるんだ、マジョリカ。」 マジョリカ:「あらあらまあまあ、マオちゃんにポチちゃんじゃないの。この部屋に来るなんて珍しいわねぇ。」 カガミ:「あ…魔王様にポチさん、こんにちは…」(おずおず) マオ:「余はこのように香水臭い場所は苦手だ。」 従者:「私も元々鼻は効かない方ですが、この部屋にくるとどうも…へくしゅっ(くしゃみする)」 マジョリカ:「これくらいいいじゃないの。マオちゃんも女の子なんだから、ちょっとはおしゃれしなきゃダメよ?いつも男の子みたいな格好して、もったいない。」 マオ:「服は余の趣味だ。放っておけ。先々代の魔王の愛人であるお前を、追い出さずに置いてやって、その上好き放題させてやってる余の寛大さに、感謝のひとつでも表わせないのか?…ったく…」 マジョリカ:「あらぁ、感謝が欲しいの?それなら感謝の印にマオちゃんの愛人になってあげてもいいのよ?」(からかう感じで) マオ:「余はそんなものはいらん。(きっぱり)それより、聞きたいことがある。さっきもぽちが言いに来たと思うが…何者かが、昨日の夜から今日の間に食料庫の余のおやつを持ち出したらしいのだ。」 マジョリカ:「あぁ、その時は魔導テレビでドラマの再放送見てたのよねぇ。だから手が離せなくって。」 マオ:「余の命令はドラマの再放送以下か!?…ま、まあいい。お前の得意の魔術で犯人について何かわからないかと思ってな。」 カガミ:「あの、その、マジョリカ様の魔術は、誰かを呪ったりとか、自分に惚れさせたりとか、そういうのが専門で…」 マジョリカ:「おだまり、カガミ。私だって魔女の端くれよ。その程度の占いだったらできるわ。」 カガミ:「えぇっ!?そうなんですか?」 従者:「おお、さすが魔女ですね!…へくしゅっ」(くしゃみしてる) マオ:「なら、早速その占いとやらで犯人を探し出すのだ!」 マジョリカ:「ふふ、任せてちょうだいv」 マジョリカ:「鏡よ鏡よ、鏡のカガミちゃん。マオちゃんを困らせたのはだぁれ?」 従者:「わわ、すごい!鏡に何か映り始めましたよ!」 (部屋にある鏡の表面にゆらゆらと景色が映り始める。) マオ:「…む?魔王城ではないようだな…城の外か?」 マジョリカ:「イマイチ映りが悪いわねぇ…えい!えい!!」 (ガン!ゴン!と鏡をテレビのように叩く) カガミ:「ああぁっ!ちょっ…何するんですかマジョリカ様!僕の宿ってる鏡がぁぁ!!!」(取り乱す) マジョリカ:「テレビと魔法はこうすれば大体上手くいくのよ。」 マオ:「…本当か?」 従者:「あ、でもちゃんと映り始めた。…うわ、魔王様!大変ですよ!もしかしてこれ、勇者じゃないですか!?しかも城のかなり近くまで来てるみたいですよ!!」 (画面に勇者っぽい青年が映っている) マオ:「勇者だと!?…そうか。謎は全て解けたぞ!」(シャキーン、と効果音) 従者:「えぇ!?本当ですか、魔王様!」 マオ:「余の大切なアメちゃんやらチョコくんやらを盗んだのはこいつに違いない!」 カガミ:「あの〜…それはどうしてそう思うんです?」(おずおずと) マオ:「ふっ…それがヤツの恐ろしい所よ。一度城に侵入しておきながらも、おやつのみを盗んで、今度は正面から堂々と入る…そして何も知らぬ余と対峙した時に全てを明かして、余に大きな精神的ダメージを与えるつもりなのだ!…人間のくせになかなか考えているではないか!」 マジョリカ:「今来たばっかりに見えるけどねぇ」 従者:「普通そんな回りくどいことしませんよねぇ。」 カガミ:「…ですよねぇ」 マオ:「いや、きっとそうだ!時間的にも犯人がわかっていい頃だぞ。多分。」 従者:「そろそろ犯人探しにも飽きてきたんですね。」 マジョリカ:「まあ、いいんじゃなぁい?この勇者ちゃん、まっすぐこっちに向かってきてるみたいだし。ほっといても勝手に城の中に入ってくるわよ。」 マオ:「む!そんなことさせんぞ!余の目の黒いうちは勇者なんぞに敷居をまたがせるかぁ!!」(だだだ、と走り出て行く) 従者:「あ、魔王様ー!魔王様の目は黒くないですし、うちに敷居はないですし、何か言ってることがめちゃめちゃですよー!!」(追いかける) カガミ:「あ、あの………慌しい人達ですね」 マジョリカ:「ふふっ、マオちゃんもポチちゃんも若いわねぇ。」 カガミ:「マジョリカ様と違ってピチピチですもんね。」(きっぱり) マジョリカ:「あらぁ〜?今日は鏡の映りが悪いわねぇ。叩きが足りないのかしらぁ?えい!えい!!おりゃ!!!どりゃぁあ!!!!」(鏡を割る勢いで叩く) カガミ:「うわわわわ!ごめんなさいごめんなさい!!冗談ですってばー!!!」 (以下続く。/途中です)