ラジオドラマ「10分探偵キャビネ」(10ぷんたんてい −)

脚本/さのや


【あらすじ概要】
時計塔のある街、モノクローム。
そこに住む探偵のキャビネは、事件を実働時間10分以内で解決してしまう名探偵。
ある日、「時の王」と呼ばれる宝石を怪盗から守る依頼を受けるキャビネだが、
実は依頼者のネガが怪盗クロックキングだった。
時計塔の設計者の1人の孫であるクロックキングは、時計塔の支配者となるべく
同じく設計者の孫であるキャビネに戦いを挑むが、助手のエルにあっさり倒される。
こうして、キャビネット探偵事務所に新しい所員が増えたのだった。

【脚本中記号について】
「」…キャラのセリフ(括弧なしはモノローグだと思っていただければ!)
()…状況説明・セリフの演技指定
※ …前後の状況説明など

【他】
・セリフの方は言い辛ければ言いやすいように語尾・言い回しを変えていただいて構いません。
・セリフが二行に渡っている部分なども一部ありますので、見落としにご注意いただければ
幸いです。(今回特に多いです/こちらでもよく見落としたりするので…;)

【キャラクター】

キャビネ (セリフ数:35)
 20歳前後/探偵/声質:中〜低、やる気のなさそうな青年声。全体的にダレた感じで。
 普段はダレたダメ人間だが、実は実働時間10分で数々の事件を解決してきた名探偵。
 ちなみに10分過ぎるとやる気が急速になくなる。趣味は寝ること。

エル (セリフ数:20)
 14〜5歳/探偵助手/声質:中〜高、感情の乏しい少女声。棒読みに近い感じで。
 キャビネの助手。見た目はかわいいが、クールであまり物事に動じない女の子。
 そのクールさは素麺のごとし。元はどこかの国の軍人で、特技は狙撃。

ネガ (セリフ数:21)
 12〜13歳/依頼人/声質:中〜高、快活・真面目そうな少年声
 モノクロームのシンボルである時計塔の設計者の孫。
 キャビネに怪盗から「時の王」を守って欲しいと依頼する。

アール (セリフ数:12)
 18歳/刑事/声質:低〜中の女性声。面倒見のいいお姉さん的。
 若くして刑事となったエリート。とある事件の際にキャビネ達と知り合ったらしい。
 今回も時計塔を警備していてキャビネ達に会う。
 
怪盗クロックキング (セリフ数:14)
 −/怪盗/声質:中〜高、尊大な少年声。
 時計塔の動力源「時の王」を狙う怪盗。
 ある理由でキャビネを敵視しているらしい。

※キャストは4名を予定しています。
(ネガとクロックキング役の方は2役でお願いする予定です)

【用語】
キャビネット探偵社
 主人公であるキャビネがやってる探偵屋さん。ご近所の雑用もこなす。
 エル嬢が切り盛りしているといった方が正しい。
 案外繁盛している様子。

モノクローム
 街の中心にある時計塔で有名な都市。都市と言ってもそんなに都会都会していない。
 産業革命時代のイギリスのイメージ。


【シナリオ本文】

シーン01:オープニング

番号 セリフ・効果音など 状況など
  (BGM〜タイトルコール)  
キャビネ/ca01 ボイスドラマ「10分探偵キャビネ」。…はじまるらしーぞ。 (※タイトルコール)
  (BGM〜フェードアウト)  
  (間)
(効果音:リーン、ゴーンという鐘の音)
 

【シーン02:ネガの依頼】

番号 セリフ・効果音など 状況など
  (遠くに鐘の音)
(キャビネット探偵社の玄関でエルと依頼人らしい少年が話している)
 
エル/el01 「キャビネ先生は今、二度寝…いえ、お休みになられてまして。宜しければ、中でお待ち下さい。」  
ネガ/ne01 「そうですか!じゃあ勝手にお邪魔させてもらいます!」 (はきはき明朗快活な感じ)
エル/el02 「あの、そっちは応接間じゃなくて先生の寝室…」 (一応言うけど
動揺はしてない)
  (効果音:ばたばたと足音)  
ネガ/ne02 「こんにちは!お休み中の所申し訳ありません!
…起きてください!探偵さん!探偵さぁーん!!」
(べしっべしっ、と
キャビネを叩いて起こす)
キャビネ/ca02 「う、う〜ん………な、なんだなんだなんだ!?怪獣でも襲ってきたのか!?
ちょ、防災ずきんどこやった!?」
(うなされ、
やがて叩かれてるのに
気付いて、混乱しつつ
起きる)
ネガ/ne03 「おはようございます!」  
キャビネ/ca03 「…あぁ、おはよう…ございます。………誰?」 (寝起き)
ネガ/ne04 「やだなぁ、僕のことを忘れたんですか?」  
キャビネ/ca04 「いや、知らないし。」  
ネガ/ne05 「そういえば初対面でしたね。」  
キャビネ/ca05 「なら意味ありげなこと言うなよ。」 (きっぱり)
ネガ/ne06 「申し遅れました!僕はネガ・モノクロームといいます!
モノクロームの時計塔を作ったモノクローム技師の孫です!」
 
エル/el03 (エル、横合いから口を挟む)
「おはようございます、先生。こちらの方は先生に依頼をしに来たとのことですが」
 
ネガ/ne07 「そうです!
「マゼンダ横丁連続鶏盗難事件」に「シアン海岸豪華客船ランチタイムつまみ食い事件」など、
数々の難事件をたった10分の実働時間で解決してしまったという名探偵のキャビネさん!
どうか僕を助けてくれませんか!?」
 
キャビネ/ca06 「(ふわぁ、とあくびをして)…はぁ、依頼?」  
ネガ/ne08 「えぇ!超ウルトラスーパーデンジャラスな大事件です!
この街の中央にある時計塔をご存知ですよね!?」
 
キャビネ/ca07 「あぁー、あの朝からガンガン鐘鳴らしてうるさい時計塔。」  
ネガ/ne09
「えぇ!その時計塔の動力源を盗む、と怪盗から予告状が来たんです!!」
(ネガ、キャビネの言ったことは
気にしていない)

(言って予告状らしいものを
びしっ、とキャビネに見せる)
  (ぺらっ、と紙の効果音)  
キャビネ/ca08 「なになに…
『今宵12時、モノクロームの時計塔の動力源、「時の王」を戴く。
止めたければ止めてみせるがいい。 怪盗クロックキング』
…時の王?」
 
ネガ/ne10 「モノクロームの時計塔は、「時の王」という宝石を動力源として使っているんです。
正しくは、宝石の持つ特殊な集光力を使って、日中の太陽の光を動力としているんですけど。」
 
キャビネ/ca09 「はぁ。…なんだか難しい話だな」  
エル/el04 「時計塔のパンフレットで見たことがあります。要は小さくて効率のいい太陽電池ですね。」  
キャビネ/ca10 「ふーん。で、それが盗まれると困るわけ?」  
ネガ/ne11 「困るなんてもんじゃないですよ!時計塔は時の王がなくては動かないんです!
もしアレがなくなったらこの街の観光協会とか大打撃ですよ!!
警察にも話したんですが、まともに取り合ってくれたのは1人くらいで…」
 
キャビネ/ca11 「ふーん。」  
ネガ/ne12 「お願いします!報酬は十分にお支払いしますから!」  
キャビネ/ca12 「ふーーん。」  
ネガ/ne13 「ヒヨコ堂の限定抹茶カステラもつけますから!!」  
キャビネ/ca13 「何ぃ!?あの幻の抹茶カステラ!?…その話乗ったァ!!」  
エル/el05 「…先生。」 (呆れた様子)
キャビネ/ca14 「だって抹茶カステラだぞ!」 (エルに)
ネガ/ne14 「ありがとうございます!それじゃあよろしくお願いしますね!」  
  (足音)(ネガ去っていく)  
  (足音、段々ゆっくりになり、止まる)  
ネガ/ne15 (ネガ、先程と声色が変わる)
「…さぁて、ちゃんと動いてくださいよ、探偵さん。…いえ、キャビネ・モノクローム。」
 
  (鐘の音が聞こえてきてシーン転換)  

【シーン03:現場へ、アール刑事登場〜怪盗との対決】

番号 セリフ・効果音など 状況など
  (キャビネ達、深夜の時計塔前にいる。)  
キャビネ/ca15 「ふわぁ…やれやれ、日が暮れてから出かけるってのも面倒なもんだなぁ…」 (あくびしつつ)
エル/el05 「引き受けると言ったのは先生でしょう。
それより、いいんですか、先生。ろくな下調べもせずに日が暮れちゃいましたけど。
…ていうかもうすぐ予告の12時ですよ。」
 
キャビネ/ca16 「ふふーん、エルくん。事件はもうほとんど解決してるわけだよ。
依頼人の話を聞いたときからね。」
(得意気に)
エル/el06 「はい?どういうことですか?」 (わけがわからず
聞き返す)
  (足音)  
アール/r01 「キャビネくんにエルちゃんじゃない。セピア通りの連続鳩激突事件以来ね!
そろそろ来ると思ってたわ。」
 
キャビネ/ca17 「アール刑事、やっぱりこの事件の担当はあなたですか。
…こういうの好きそうですもんね」
(後半、
やや呆れた様子)
アール/r02 「あったりまえじゃない!怪盗を捕まえるのは刑事のロマン!
その為に私はこの職についたといっても過言じゃないのよ!
(以下妄想)
現れる怪盗、今にも盗まれそうになる宝石!そこに颯爽と現れる私!
さぁ、怪盗ハムスター小僧!今日こそお縄を頂戴しろい!」(岡っ引き風)
 
キャビネ/ca18 「なんかちがくねぇ?」 (冷静にツッコミ)
エル/el07 「あの、先生、それよりさっきの話は…」  
キャビネ/ca19 「まあ、すぐにわかるさ。…ちょうど12時だ。」 (キャビネ、
エルの話を遮る)
  (効果音:鐘の音)  
エル/el08 「そういえば先生、アールさん。
時計塔の前で待つより、動力源のある部屋で待っていた方が良かったのでは?」
(思い出した風に)
キャビネ/ca20 「はっ!」 本気で気付いてなかった。
アール/r03 「そういえば!」 本気で気付いてなかった2.
  (鐘の音、鳴り終わる)  
クロックキング/ck01 (怪盗クロックキング、高笑いして時計塔のてっぺんに登場)
「はーっはっはっはっは!!我輩の名は怪盗クロックキング!
時計塔の宝は我輩のものだー!!」
我輩=わがはい
キャビネ/ca21 「あ、良かった。あっちもバカで。」  
エル/el09 「時計塔のてっぺん…あんなところにいつの間に。」  
アール/r04 「現れたわね、怪盗クロックキング!」  
キャビネ/ca22 「出たな、クロックキング!
…『クロックキング』って言いづらいな。『くっきー』でいいよな。
…出たな、くっきー!!」
後半、真剣に言い直す。
エル/el10 「出ましたね、くっきー。」 (真剣)
アール/r05 「一体何を企んでいるの、くっきー!」 (超真剣)
クロックキング/ck02 「お前ら、我輩を馬鹿にしてんのかー!!!」  
アール/r06 「呼び名はひとまず置いといて……
時計塔の動力源を盗むなんてバカな真似はやめなさい!」
 
クロックキング/ck03 「馬鹿な真似?
何を言うかと思えば…この時計塔は本来ならば我輩の所有物。
本来の持ち主である我輩が取り戻しに来ただけのことだ!」
 
キャビネ/ca23 「じいさんの恨みを晴らしに来たってわけか…ネガ・モノクローム。」  
クロックキング/ck04 「やはりお前にはわかっていたようだな!キャビネ・モノクローム!」  
アール/r07 「モノクローム…って、この時計塔の設計者の?」  
エル/el11 「ネガさん、って……先生、これは一体…」  
クロックキング/ck05 「フッ…我輩が特別に解説してやろう。
モノクロームの時計塔のを作ったのは元々は2人の兄弟だった。
技術者であった弟は設計を、資産家であった兄は時計塔建築を受け持った。
…しかし、兄の方は完成間近になって、時計塔を作ったのは
自分1人だということにしてしまった。
家宝である『時の王』を自分の物にする為にな!
…そう、それがお前の祖父だ!キャビネ・モノクローム!」
 
エル/el12 「先生…だから話を聞いてすぐに、彼のことがわかったんですね」  
キャビネ/ca24 「…あぁ。」  
クロックキング/ck06 「それ以来我輩の祖父…いや、我輩の一族は何をやっても上手く行かず…
それもこれも全部!キャビネ!お前の祖父が全てを奪ったからだ!
この時計塔は、『時の王』は、我輩のものであるべきなのだ!!」
 
キャビネ/ca25 「俺のじいちゃんはさ、ロクでもない人間だったけど…
死ぬまでずっと悔いてたよ。
一時の感情で弟から家宝も時計塔も奪ってしまった、ってな。」
 
アール/r08 「キャビネくん…」  
  (キャビネ、クロックキングに呼びかける)  
キャビネ/ca26 「怪盗クロックキング…いや、ネガ・モノクローム。
お前はそれを手に入れてどうする?盗んだ物で幸せになれるのか?

…それに、こんなボロっちいだけの時計塔、手に入れたっていいことないぞ。」
(最後はいつもの調子で
やる気ない感じに)
クロックキング/ck07 「う、うるさい!黙れ!」 (キャビネの言葉に動揺している
…が、以下は無理をしている感じで
悪役っぽく)
クロックキング/ck08 「…そうだな、確かにこのようなボロい時計塔など手に入れても意味はない。
ただ、時の王は別だ。
この宝石の持つ特殊な集光力を欲しがる人間はごまんといる。
海向こうの軍事国家にでも売り飛ばして、我輩の輝かしい人生の足掛かりに
させてもらおうか!」
 
キャビネ/ca27 「やれやれ…言っても聞かないか。
エル、頼む。あいつの言い分は聞き終わったしな。」
 
エル/el13 「はい、先生。」 (エル、銃を取り出し、構える)
クロックキング/ck09 「フッ、こんな距離で当たるわけが…ふぎゃ!?な、なんだと!?」 (途中で銃声、
クロックキングの額に
ゴム弾がばしっ、と命中する)
エル/el14 「非殺傷用のゴム弾です。実弾でないことを感謝して欲しいものですね」  
クロックキング/ck10 「くっ、卑怯だぞ!飛び道具なんて!!」  
エル/el15 「お黙り。聞き分けのない悪い子はおしおきです。」 (きっぱり、と)
  (ばんばんばん、と容赦なく撃つ)  
クロックキング/ck11 「わー!わー!!わー!!!?ちょ、ちょっと待っ……!!」  
アール/r09 「…エルちゃん、楽しそうね。」  
キャビネ/ca28 「おー、全部額に命中か…さすが元・軍事国家ツヴァイのスナイパーだな。
…ていうか、大丈夫か、アレ。」
 
クロックキング/ck12 「我輩は…時の王を手に入れるんだ…それで輝かしい人生を…うぅ。」 (ばたり。と倒れる)

【シーン04:後日談】

番号 セリフ・効果音など 状況など
  (爽やかな鳥の鳴き声、遠くに鐘の音)  
キャビネ/ca29 そうして、怪盗クロックキングがどうなったかというと。  
ネガ/ne16 「ええと、今日は、お昼ごはんを作って、
そのあとリビングや他の部屋の掃除をして、全員分の洗濯をして、
その後はベランダーのプランターの手入れをして…」
(あわあわした感じで)
(セリフ後怪盗口調に戻る)
ネガ/ne17 「だー!!!
どーして超ウルトラハイパーインテリジェンスな我輩が
炊事やら掃除やら洗濯やらをしなければいけないのだー!!」
 
キャビネ/ca30 「窃盗未遂の未成年を引き取って住み込みで雇ってあげてるんじゃないか。
警察に引き渡さなかっただけ感謝しろい。黙っててくれたアール刑事にもな。」
 
エル/el16 「終わったら、夕飯のお買い物もお願いしますね。
あとゴミ出しと、本棚の片付けと、帳簿の整理も。」
 
ネガ/ne18 「イエッサー、先輩!
…って、どんどんどんどん用事を増やすなー!!!」
 
  (ばたばたと足音、アールが部屋に入ってくる)  
アール/r10 「キャビネくん、みんな、いる!?
大変よ!この街始まって以来の難事件なの!
あなた達の力を貸してちょうだい!」
 
キャビネ/ca31 「…はぁ、今度はなんですか、アール刑事。」  
ネガ/ne19 「何ぃ!?事件だと!?
…ふっ、面白い。10分探偵のお手並み拝見といこうじゃないか。
せいぜい謎が解けずにもがき、苦しむがいい!はーっはっはっは!!」
 
キャビネ/ca32 「何言ってんだ、行くぞ助手2号。」  
エル/el17 「ぐずぐずしてると置いていきますよ、2号。」  
  (キャビネとエル、出て行く。/足音)  
ネガ/ne20 「え、に、2号?
ちょ、ちょいと?我輩も事件解かなきゃダメなの!?おいこら、待てー!!!」
 
  (足音)  
アール/r11 「結構仲良くやってるじゃない。
ま、今回もよろしく頼むわよ、10分探偵さん。」
 
  (鳥の鳴き声、時計塔の鐘の音〜BGMへ)  

【シーン05:キャストコール】

番号 セリフ・効果音など 状況など
キャビネ/ca33 キャビネ・(キャスト名)  
エル/el18 エル・(キャスト名)  
アール/r12 アール・(キャスト名)  
ネガ/ne21 ネガ、クロックキング・(キャスト名)  
キャビネ/ca34 「10分探偵キャビネ…え、これで終わりか?ま、聴いてくれてありがとーな。
編集・脚本 さのや
製作・提供は「Homework+」でお送りしました、っと。」
 
  (ちょっと間)  
エル/el19 「先生、10分も働いてました?」  
キャビネ/ca35 「ま、いいんじゃないの?」  

【おまけ】

番号 セリフ・効果音など 状況など
クロックキング/ck13 「超ウルトラスーパーデンジャラス次回予告!
「超・天才怪盗クロックキング」。

キャビネに敗れた超・天才怪盗クロックキング。
だが彼は不死鳥のごとく蘇った!
美術館の名画から宝石店の宝石、更にはご家庭の食卓に並ぶメザシまで!
モノクロームの街に平穏の時はもう訪れないのだ!
はーっはっはっは!愚民どもよ、我にひれ伏すがいい!」
 
エル/el20 「なお、以上の予告は嘘ですので本気にしないようにしてくださいね。」  
クロックキング/ck14 「…え?マジで?」  

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